第42章 〜42〜番外編①
「ねぇ、信長様?あの可愛らしい女子は?」
「織田家縁の姫だ。お前らに興味があると言うから、少しだけ顔を出させただけだ。気にするな。」
「まぁ……いけない子ね……。」
東雲は信長の腕に手を添えながら微笑む。
「私はてっきり信長様の大事な女子かと思って、胸を痛めてましたのに……」
「思ってもない事を抜かすな」
「まあ、怖い人ね」
「あいつは俺の物だ。手を出す事は許さん」
「はて、なんのことやら」
東雲は妖しく微笑んで、徳利を持ち上げる。
信長は新たに注がれた酒を一息に飲み込む。
「そんなことより……信長様?」
「なんだ」
東雲は信長の耳元へ口を近づけて囁くように言った。
「……今日こそ、私を抱いてくださります?」
「ふ、戯言を」
「もう、喰えない人ね」
「お前もな」
「ふふ……あら」
東雲は床に転がった簪を手に取る。
「この簪……あの子のかしら?」
「そうだな」
「……信長様、追いかけても?」
「……好きにしろ」
信長がそう答えると、東雲は嬉しそうに微笑んだ。
そして、背後に構える花魁に目配せすると立ち上がり、静かに広間を出て行く。
「…………」
東雲が側を離れた瞬間、信長が光秀を見ると光秀はすっと立ち上がった。
「あら……明智様、一体どちらへ?」
「ああ、所用でな。すぐ戻る。」
光秀は花魁の頬をするりと撫で上げ微笑むと、静かに広間を出ていった。