第42章 〜42〜番外編①
「信長様。今年もお呼び頂き大変嬉しゅうございます。」
「ああ、今回も頼む。東雲。」
「はい。失礼致します。」
東雲と呼ばれた花魁は、滑らかな動作で信長様の隣に来ると徳利を持った。
「ささ、どうぞおひとつ……」
「あぁ」
信長様はお尺された杯を上に持ち上げて広間を見渡した。
「皆の者、大いに飲んで楽しめ。今日は日頃の労いを兼ねた宴だ。」
信長様が一言そう言うと、家臣達は喜びの声や賛辞の声を上げる。
信長様が杯に口をつけると、宴が始まった。
「信長様、相も変わらず逞しいお方ですこと」
「そういうお前も変わらずだな」
「ええ、お陰様で」
東雲さんはそう言うと、チラリと私を見た。
その視線の流し方がとても色っぽく思えた。
(……邪魔だよね)
私は信長様に近づくと、耳元で言った。
「……じゃ私は失礼しますね」
「……満足したか?」
信長様は私を見てニヤリと笑う。
「はい。皆さんお綺麗で大満足です」
「そうか。」
「はい。じゃあ失礼します」
立ち上がると、東雲さんと目が合った。
すると、にこりと微笑まれどきっとした。
2人に軽く一礼してその場を後にする。
その時に、ちらっと政宗を盗み見ると、可愛らしい花魁の1人と話をしている。
そして、隣に座る花魁の腕が政宗の肩に添えられているのに気づいた。
(……まぁ……大丈夫だよね……私は早く部屋に戻ろう)
少しだけ芽生えた不安を胸に、広間を後にした。