第35章 〜35〜
そんなことを考えていると、身体に重みを感じ、バタンという音と同時に後ろに倒れた。
「……え?」
気がつくと、政宗に押し倒される形で畳に寝転がっていた。
私の頭は光秀さんが咄嗟に出してくれた掌に受け止められたが、顔の隣にある政宗の頭はとてつもなく痛そうな音で叩きつけられた。
「ちょ、政宗?ねぇ!」
「………………」
肩を叩くが、帰ってくるのは規則正しい呼吸で。
意味がわからず光秀さんを見上げると、腹黒い笑みで私たちを見下ろしていた。
「案ずるな。酒を飲ませただけだ。」
「え、酒って……(あの湯呑み、お酒だったの?え、なんでお酒飲んだからって…………)」
「知らなかったのか?政宗は下戸で、一口でも酒を飲むとこうなる。」
「……嘘でしょ」
「今目の前にしてる事実を受け止めろ」
「……あの……とりあえず、助けてください」
「いいだろう」
光秀さんはそういうと、政宗の身体を反転させて、私を起き上がらせてくれた。
「下戸って……こんなにお酒が駄目な人初めて見た……」
「まあ、珍しいだろうな」
政宗は顔を赤らめて規則正しい寝息を立てている。
「こうなったら、朝まで起きないぞ」
「うそ……」
「まあ、中身を確認せず飲み干したこいつが悪い」
(湯呑みにお酒入れて手渡す貴方の方が……)
そう思いながら光秀さんをちらりと見た。
「……どうかしたか?」
「いえ、なんでもないです」
(こわ……絶対敵に回したくない……)
不敵に笑う光秀さんが恐ろしく思えた。