第35章 〜35〜
「お前、何泣いてんだ」
私が泣きながら顔を上げると、明らかに怒っている政宗が居た。
「み、光秀さんが……」
「お前、人の女を泣かせるとはどういうつもりだ?」
「そうだな、俺が泣かせたんだ。泣き止むまで面倒みよう」
「ちょ……(話がややこしくなる……)」
「この野郎……」
政宗は今にも殴りかかりそうな勢いで光秀さんを睨みつけている。
助けて欲しくても周りは周りで盛り上がっていて、誰も私達のことを気に止めてない。
私は慌てて政宗の手を握り落ち着かせる様に言った。
「政宗聞いて。……私が勝手に光秀さんの話聞いて泣いただけだから……」
私がそう言うと、政宗は光秀さんを睨みつけたまま光秀さんと反対側の私の隣に座った。
「……なんでこいつの話でお前が泣くんだよ」
「だって……光秀さんが悲しい話するから……」
「別に俺は悲しくなんてない。お前が勝手にぽろぽろと泣いたんだろう」
「そうです……」
「意味わかんねぇ」
「……とりあえず。大丈夫だから。」
「……お前がそう言うなら……」
「ふ、にかかれば独眼竜も弱いものだな」
「……光秀、お前……1発殴らせろ」
「だめだめだめ!もう、光秀さんもなんで火に油注ぐようなこと言うんですか!」
「俺は目に見た事を言った迄だ」
「なんだと?」
「ちょっと、政宗落ち着いて」
「そうだぞ。これでも飲んで落ち着け」
光秀さんは湯呑みを手渡すと、政宗は怒りながらも素直に受け取り、湯呑みをぐいっと飲み干した。
(……光秀さんは……自分の弱い所を隠すために、ああやって皮肉ったりするのかな……だとしたら相当疲れるんだろうな……)