第35章 〜35〜
「なぜお前が泣く」
「だって……なんかっ……悲しくて……」
「つくづくお前は純粋な奴だな。俺なんかのために泣くな。俺が政宗に叱られるだろう」
そう言いながら、私の流れる涙を手で拭ってくれる。
その手がいつもの意地悪な光秀さんからは考えられないほど優しくて余計に涙が出た。
「光秀さんが……」
「ん?」
「いつか……その人と無事に会えること祈ってます……」
私が泣きながらそう言うと、光秀さんは柔らかく笑ってありがとうと小さく言った。
いつも人をからかう様な態度のこの人でも、今聞いたことは本当だと直感で思った。
もしも嘘だとしたらあまりに私の頬に触れる手が優しすぎて。
光秀さんと彼女の幸せを心から願った。
「うっ……うう……」
「まったく……お前泣き上戸か」
「違う……光秀さんが悪いんですよ……」
「お前が聞いたから素直に話しただけだ」
「だって……(まさかそんな悲しい恋してるとは思わなかったんだもん……)」
お酒のせいか、1度流れ始めた涙はなかなか止まってくれない。
泣きじゃくる自分が恥ずかしく思えて俯くと、目の前に人が立つのが見えた。