第34章 〜34〜
政宗と並べられた料理の話をしながら宴を楽しんでいると、不意に視界の端にひとりゆっくりとお酒を飲んでいる家康が写った。
(あ、そうだ。優鞠との事聞いてみようかな……)
「ねぇ、政宗」
「ん?なんだ」
「ちょっと家康の所行ってきていい?」
「なんでだ?」
「優鞠との事でちょっと聞きたい事があって」
私は誰にも聞こえないように政宗に耳打ちした。
「そうか、行ってこい」
「ありがとう」
政宗の許しを得て、私は家康の元へ向かう。
「家康」
「」
「隣いい?」
私は隣に腰掛けながら聞いた。
「……答える前に座るのやめて」
「ふふ、断らせないもん」
「……何か用」
私は小さな声で家康だけに聞こえるように言った。
「優鞠のこと」
「!!!」
「そんな驚かなくてもいいじゃない」
「……何」
「優鞠に好きだって言ったんだよね?」
「それが?」
「……恋仲になってって……ちゃんと優鞠に言った?」
「……え?」
家康は私の言葉で、その時のことを振り返っているように考え込む。
「……言ってない」
「やっぱり……」
「妻にしたいとは言ったけど……」
「それも聞いた。流石に気が早いんじゃない?」
「……だって、少しでも俺のこと意識して欲しくて……」
「その気持ちも分かるけど……優鞠困ってたよ?友達になろうって言われて悩んでたのに、いきなり妻だなんてって」
「……失敗したかな……」
「うーん。意識させることがその作戦の勝ちだとしたら家康の勝利だと思う」
「……そっか」
私の言葉に家康は少しだけ顔を明るくさせた。
(なんか、私が言うのもあれだけど……初々しくて可愛いな……)
「だからさ、優鞠にもう一度ちゃんと告白してあげて?恋仲になってって。じゃないと優鞠どうしたらいいかわからないじゃない。」
「……そうだね」
家康は決心したように立ち上がった。
「……ちょっと行ってくる」
「ふふ、うん。頑張ってね」
「……」
「うん?」
「……ありがと」
家康はそう言うとスタスタと広間を出ていった。
それを見送って私は上機嫌で政宗の隣へと戻る。