第34章 〜34〜
私が信長様の元から政宗の元へ行くと、腕を掴んで隣に座らされた。
「ふふ」
「何笑ってやがる」
「なんでもない。」
「ったく……」
拗ねたような態度の政宗が可愛らしく思えてつい頬が緩んでしまう。
私がにこにこして政宗の横顔を見ていると、政宗が不意に私を見据えて小声で言った。
「お前、後で覚えてろよ」
「……はーい……」
その言葉で私は表情が凍りつくのを感じた。
それを見て政宗は吹き出すように笑う。
「ふっ……そんな怯えるな」
「だ、だって……」
「何もしない。今はな」
「……うん」
政宗は私の耳に口を寄せて呟いた。
「お前が決心つけたら、な」
そう言うと政宗はすぐ顔を離して得意げに微笑む。
耳元に感じた吐息と言葉で、せっかく落ち着いた頬の火照りをまた感じる羽目になった。
(ほんと……この人心臓に悪い……)
途端に上機嫌になった政宗に安堵しながらも、今後の事が少しだけ怖くなった。
(でも……受け入れちゃうんだろうなぁ……政宗の為にも早く決心つけないと……よし。)
私は心の中で頷くと、盃をぐいっと傾けた。