第32章 〜32〜

「あの……今から言うこと誰にも話さないでくださいね……」

「ああ、約束する」

「家康様に……その……告白を……されまして……」

「ほぉ」


秀吉様は嬉しそうな顔で笑った。
その顔を見て何故だか私まで嬉しい気持ちになった。


「恋仲にはなってないのですが……あの……」

「……だから俺に改めて礼を言いに来たのか」

「……はい。自分なりにけじめをつけたくて……(本当に鋭いな……敵わない……)」

「そうか。そのけじめはちゃんとつけられたか？」

「……はい。お陰様で。」

「ならいい。その様子だと家康の事を、お前も好いてるんだろ？」

「……まだ、はっきりとは分かりません……。でも、好きになれたらいいなと思います……」

「ん。今のお前、すごい綺麗に笑ってるぞ」

「え……綺麗って……」

「家康の事考えてるからだろ？」

「……そうでしょうか……(無意識に笑ってた……)」

「ああ。俺はお前達のこと応援するぞ。」

「でも……女中が武将と恋仲になるなんて……」

「そんな事で悩んでるのか？」

「……少し……」

「まったく……。好き同士ならそんな事構わないと思うぞ？」

「そうでしょうか……。」

「ああ。それに、織田家の奴らはそんな事でお前を虐めたりしない。それはお前も分かってるだろ？」

「それはもちろん……皆さんとてもいい人ですし、そんな事するなんて思ってません……」

「それなら、もう悩む必要ないだろ」

「…………」

「今日俺にちゃんと気持ちを言えただろ？。お前なら大丈夫だ。自信持て。」

「……はい。」


秀吉様にそう言われると、本当に何もかもうまく行きそうで安心する。
この人は本当に凄い人だと改めて感じた。



「ま、何かあればまたいつでも来い。と同じように、お前はほっとけない妹みたいに思ってる」

「そんな……妹だなんて……光栄です……」

「ふ、大袈裟だ」

「ありがとうございます。」

「ああ。」

「では……そろそろ失礼します。お忙しいのに長々と居座ってしまって……」

「気にするな。いつでも気軽に遊びに来い」

「はい。今度は……様とお邪魔しますね」

「ああ、待ってる」