第32章 〜32〜
「それで、どうして今になって俺に礼を言いに来たんだ?」
「そ、それは……」
「ん?」
「多分……様のおかげです」
「の?」
「様が……私に勇気を下さったんです。」
「勇気?」
「……恥を承知で言います……。私は恋愛経験が皆無なので……秀吉様への気持ちを……色恋沙汰だと思っておりました……。でも……今は感謝と尊敬の気持ちだと分かります」
私がそう言うと、秀吉様は驚いたように私を見た。
「…………」
「も、申し訳ありません……本当はそこまで言うつもりでは……」
「いや、驚いただけだ。気にするな。」
「……はい……(恥ずかしい……どうしよう……)」
「まあ……ありがとな。」
秀吉様は優しい顔で私の頭を撫でた。
私は顔がさらに火照るのを感じながらも、伝えて良かったなと思った。
(やっぱり……凄い人だな……)