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イケメン戦国〜未来を夢見る〜

第32章 〜32〜








「秀吉様に……もう1度ちゃんと……お礼を言いたくて」

「礼?」

「はい。あの、私が前に仕えていた大名の所から、織田家に仕えられる用手配してくださって、本当にありがとうございました」


私は秀吉様の目を見てそう言うと、座布団を降りて深々と頭を下げた。


「大名の家が、目の前で崩れていくのを見た時、本当に心が晴れました。それと同時に、今後自分はどうなってしまうのかと言いようの無い不安で押しつぶされそうでした。」

「……」

「でも、その時秀吉様にお声をかけて頂いて、織田家の女中にとのお力添えと、私の父への心からのお言葉……本当に感謝しております。」


私が頭を下げて言葉を紡ぐ間、秀吉様は一言も発しなかった。

いきなり御殿へと押しかけて、今更の感謝の気持ちを投げかけられて困惑しているのではと、今更怖くなって頭を上げられずにいた。

でも、この機会を逃せばもう気持ちを伝えられる日は来ないかもしれない。
そう思って必死に言葉を続けた。



「……あれから、織田家に仕えて3年が経ちました。私が今、こうして生きていられるのも、充実した日々を過ごせるのも……すべて秀吉様のおかげでございます。」


私の人生、幸せな期間は他の同年代の子達よりも明らかに少なかったかもしれない。
でも、幸せだと感じた事がなかった訳では無い。

家族と笑って過ごせていた時期も、家康と遊んだ幼い時も、秀吉様に助けていただいた時も、今と楽しく過ごす時も、私にとっては幸せ以外の何物でもない。

今笑って過ごせる今がとても大切で、それは秀吉様があの時私に声をかけなかったら、今自分はどうなっていたのかと考えるだけで恐怖だった。


「……あの時、もし秀吉様にお声をかけていただけなかったら……恐らく私は今生きていなかったとすら思います……本当にありがとうございました……」


心からの感謝を述べ、頭を下げ続ける。
すると、秀吉様が立ち上がり、私の目の前へと座り直した。





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