第32章 〜32〜
(やっぱり御殿にいた……もう逃げられない……)
通された部屋にはいると、座ってろと言われ大人しく腰掛ける。
初めて入る秀吉様の御殿に更に緊張が増すのを感じていた。
「ほら、飲め」
声をかけられ、はっとすると目の前にお茶が入れられていた。
「あ、申し訳ありません。いきなり押しかけてお茶まで……本来私がやらなければならないのに……」
私がそう言って慌てて頭を下げると、秀吉様は優しい声で言った。
「気にするな。俺の部屋へ招き入れたんだ。持て成すのは俺の役目だろ?」
「……申し訳ありません……」
「優鞠。こういう時は笑ってありがとうって言えばいいんだ」
「…………ありがとうございます……」
私が素直にそう言うと、秀吉様は嬉しそうに笑った。
「ああ。それでいい。」
満足そうに笑いながら秀吉様はお茶をゆっくり飲んだ。
私も恐る恐るお茶をいただき、湯呑を机に戻すと秀吉様が少し真面目な顔で問いかけた。
「それで?何かあったか?」
「えっと……個人的にお話がありまして……」
「個人的?なんだ?」
「……」
私はゆっくり深呼吸してから、秀吉様に向かって話し始めた。