第6章 〜6〜
「おう家康。まさかお前が先に見つけてるとはなぁ。」
「森の中で見つけられなかったから、もしやと思って川に出てみれば……家康にも捜索を手伝わせて正解だったな」
「そうだな。ふっ……本人は心底嫌そうな顔してるがな」
「当たり前でしょ。なんで俺がこんな変な女探さなきゃいけないの」
「お前も隣で聞いてただろ?信長様の命令だ。」
「そうですけど……」
「ところで、馬降りて2人で何やってんだ?」
「この人が怪我してたから、薬塗ってた」
「怪我だと?酷いのか?」
秀吉も馬を降りて私の目の前にやって来た。
その顔は先ほどの不審人物を見る様な険しい顔つきではなく、本当に心配そうな顔をしていた。
「応急処置で薬は塗りました。あとは戻って救護班にまかせます。」
「あぁ、家康、ありがとな」
「……別に。そのために俺に探しに行かせたんでしょ」
「気づいてたか。お前なら嫌々でもそうしてくれると思ってたからな。」
「……(ったく……)」
先ほどの寺の前で尋問された時とは全然違う雰囲気に私は拍子抜けしていた。
「…ん?どうした?怪我が痛むのか?」
「……いえ、もう大丈夫です……」
「その割には表情が暗いぞ?」
「いや……さっきとは貴方の雰囲気が違う……気がして……」
「……?そうか?」
「……さっきは……なんていうか、威圧感があったから……」
「それは悪い事をしたな。俺も突然の出来事で対処しきれなかったんだ。別に今はお前を捕まえて牢に閉じ込めようなんて思ってない。安心しろ。」
そう言って秀吉は、私の頭にポンッと大きな手を乗せた。
「不安にさせて悪かった。お前のことは信長様を助けてくれた恩人として扱うつもりだ。」
「……恩人だなんて大袈裟……」
「大袈裟なもんか。お前が連れ出してなかったら俺達の主は焼け死んでいたかもしれん。礼を言う。」
秀吉はそう言って私の頭に乗せた手を弾ませながら優しく笑った。
その動作を見て顔を少し曇らせた家康が私に向き直って聞いてきた。