第30章 〜30〜
「えっと、織田信長は……天下統一間近で、本能寺にて討死します。」
(既に本人にも言ったけど……改めて言うのも嫌だな……)
「そして、その後織田信長の意志を継いで豊臣秀吉が天下を統一します」
秀吉さんが視界の済で、少し動いた気がした。
(明智光秀が本能寺の犯人だってことは絶対に言わない。あと……あんまり近い未来のことも言わない方がいいよね……)
「ほお……。本来であれば、お館様は本能寺で死んでいたはずだと」
「私が知る歴史では……。でも、実は生きていて、影で動いていたって説もあるみたいです」
私がそう言うと、光秀さんは面白い事を聞いたという顔でニヤリと笑った。
「して、本能寺を襲ったのは本当に顕如なのか?」
「えっと……(どう言おう……)」
私が言葉に詰まったのを即座に感じ取り、光秀さんが面白そうに言う。
「どうした?」
「いえ。えっと、私が習ったのは、犯人は未だわからないってことです……」
「わからない……?」
私の言葉に光秀さんは笑顔を消し、私をまっすぐ見た。
「500年昔の事なので、その時の資料がまだ全て発見されてないみたいで……犯人は未だ解明されてないようです」
(授業では明智光秀だって習うけど……本当は正確にはわからないんだよね)
私は歴史の授業の事を必死に思い出しながら、先生がこぼれ話のように話していたエピソードを言った。
「そうか……」
「私も歴史にはあまり詳しくないので……でも、私がこの時代で本能寺で見たのは絶対に顕如って人だと思います。」
「それについては今も詳しく調査中だ」
光秀さんはそれ以上触れてくれるな、という視線を投げかける。
そして次の質問を投げかけた。
「それで?俺の名前も後世に残るのか?」
「あ、はい。織田信長の家臣として……」
「他には?」
「え?(やっば……)」
「他に、俺についての説明は無いのか?」
歴史は並の勉強しかしてこなかった。
それに、歴史を最後に勉強してから随分たっている。
明智光秀について、本能寺の変以外に彼が成した事を思い出せなかった。