第20章 〜20〜
「まずはこっちだ」
政宗がそう言って指さした方を見ると、そこは小物を扱う店や着物・反物を扱う店など、女の子が好きそうなお店が建ち並んでいた。
「わぁ……可愛いし綺麗なのいっぱい……」
「見たい店あったら言えよ」
「うん……」
私は左右目移りしながらもゆっくり歩いている。
(……ってか見てもお金ないから買えないんだよね……。着物とか高そうだしなぁ……。あ、佐助くんにお金返すの忘れてた。次来たら返さなきゃね)
そんなことを考えていると、たくさんの髪飾りを売る商店が目に付いた。
(可愛い……買えないけど見るだけいいかな?)
私は政宗の手を軽く引いた。
「ん?」
「あの店見てもいい?」
「ああ、いいぞ」
政宗に了承を得て、私は店先に並べられた髪飾りを見させてもらうことにした。
「こんにちはお嬢さん」
「あ、こんにちは」
「ゆっくり見ていってくれ」
「はい、ありがとうございます」
並べられた髪飾りは、どれも細かい細工がしてあって、見てるだけでテンションが上がる。
前の時代じゃ滅多にアクセサリーなんて付けなかったけど、今なら髪をちゃんと結う事も増えるだろうし……などと考えていると、ひとつの簪に目が止まった。
「……綺麗……」
その簪は漆塗りの様な柄で、先に硝子細工のようなキラキラした花があしらわれている。
「お、お嬢さんお目が高い。それは職人の新作なんだ」
「へぇ……」
「その花が作るのが難しいらしくてね。やっと気に入る出来の物が仕上がったんだと」
「…………そうなんだ」
「ああ、簪にそんな細かい細工をする職人はあんまりいないからな。紛うことなき一点物だ。」
「……一点物……(女として聞き捨てならない響き……でもなぁ)」
この時代の通貨など持っていないので、渋々その簪を元に戻そうとした。
すると政宗の手がすっと主人に差し出された。
「主人、この簪いくらだ」
「まいど。」
「え?」
目の前でされる会話についていけずにいると、私の手からすっと簪が抜き取られた。