第20章 〜20〜
安土城をでて橋を渡り、少し歩くと城下町が見えてきた。
城から遠目に見たことはあったが、実際に来るのは初めてなのでわくわくしていた。
「すごい……城から見ても思ったけど広いね……人が沢山……」
見渡す限り町人が笑いながら世間話をしていたり、食べ物や小物や生地を売っていたり……
所狭しと家やお店が建ち並んでいた。
「やけに賑わってるな……祭りか何かあるのか?」
「祭り?」
私達がそんな話をしていると、政宗に気がついた町人が話しかけてきた。
「これは政宗様!ご無沙汰しております。」
「ああ、暫くだな」
「こ、こんにちは」
「おや、これは可愛らしいお嬢様だ。政宗様も隅におけない……」
「ふ、そうだろ」
「……?」
「今日こいつを案内してやるつもりで来たんだが、やけに人が多いな」
「今日は神社で祭があるんです。良かったら行かれては?」
「やはりそうか……後で行くか?」
政宗は私に問いかけた。
「行きたい!」
「わかった。平昌、また後で店に顔を出す」
「お待ちしております」
平昌と言われた男は私達に頭を下げ、歩いていった。
「政宗、今の人は?」
「あいつは八百屋の旦那だ。この城下にも八百屋はいくつかあるが、平昌の店が一番品揃えがいいからよく顔を出すんだ」
「八百屋さんなんだ……行きたい」
「言うと思った。後でな」
政宗はそう言うと幼い子供を見るような目で私を見た。
「ん?」
「人が多い。迷子になるなよ?」
「ならない。多分……」
「ふ、ほら」
政宗は左手を私にすっと差し出した。
少し戸惑いながら控えめにその手を握ると、ぐいっと手を包み込まれた。
「ほら、しっかり握らねーとはぐれるぞ」
「……うん。」
冷静を装ってるつもりだが、絶対顔赤いんだろうな……などと思いながら、手を繋いで歩けることが嬉しくて堪らなかった。