第7章 第七章
「主、只今帰還致しました…」
「あ、お帰りなさい!」
「主…貴女にこれをーー…貴女随分汚れましたね」
宗三さんが資源や依頼札を私に渡すと、眉間にシワを寄せて見下ろして来た。さっきまで畑仕事をやっていたと頬を拭おうとすれば、手を叩き落とされ呆れたようなため息と共に香を焚いた布を優しく押し付けられて拭われた。とてもいい匂いがする。
「宗三さんって…お洒落ですね」
「はい…?いきなりなんですか、気持ちの悪い…」
「気持ち悪い…宗三さんに言われるととてもショックが大きいんですが、ただ綺麗だなって…」
「……貴方も、天下人の象徴を侍らせたいのですか……?」
宗三左文字さんの言葉に内心とても戸惑った。彼が刀だった頃…ずっとかごの鳥のように使われることもなく、ただ在ることだけを求められていた。だからそんな言葉を吐いたのだろう。私はぶんぶんと顔を左右に振り真っ直ぐ宗三さんを見上げた。
「私、宗三さんに助けて貰わないと困ります!えぇ!それはもう籠の鳥なんて言わせませんよ!こき使ってやります!遠征や出陣して沢山敵を倒して来て下さい!なんでしたら演練で私の宗三さんはこんなに綺麗で強いんだって見せびらかせますとも!」
「……貴女にこき使われるなんて、死んでも嫌です」
「ひ、酷い!ちょ、宗三さん…いたい、痛いですっ!」
先ほどよりも乱暴に頬の汚れを落とされ拭かれる。多分もう汚れはきっとついていないというのに、中々酷い事をして来る。頬がヒリヒリして熱を持っていた。
「ですが…貴女が本当に助けて欲しい時、少しばかりは手を貸してあげても構いません」
「そ、宗三さんっ!」
嬉しくて手を握りたかったが、両手に資源と依頼札を抱き抱えている私は悶える事しか出来なかった。しかし逆に資源や依頼札などを全て放り出して抱き着いたとしたら、お洒落で綺麗好きな宗三さんに本気で嫌われてしまいそうだと思えて止めた。
「そう言えば、誉って一体誰が…」
長谷部さんを見ると褒めて欲しそうな視線をグサグサと感じる、桜乱舞な為直ぐに分かった。うん本当…流石だわ長谷部さんと妙に関心してしまう。長谷部さんの名を呼べばピクリと反応を返し私の前で膝をついた。
「お疲れ様でした…」
「主命を果たしたまでのことです」
そう言いつつ嬉しそうにうっとりと私を見上げて来る、頭を撫でれば他の刀剣男士達からのブーイングが聞こえた。