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【企画SS】秋桜~君の知らない気持ち~

第4章 20年越しのアイ・ラブ・ユー。





木兎は言った。

あれは20年前の日。
夏休みが明けて最初の登校日。
寝坊して遅刻した彼は、近道を通って学校へ向かっていた。
するとそこには、ランドセルに交通安全のカバーをつけた女の子がいたという。
大きな瞳からは涙がこぼれていて、どうしたのかと聞くと、犬が吠えてて怖いと言った。
少女は一回り身体の大きい木兎の背中に隠れながらその道を通ったという。
動物が苦手だという少女に木兎はその日から自分の家に招き入れては、飼っていた子猫と遊んだという。
日を重ねるうちに少女は動物嫌いを克服し、通れなかった道も笑って通れるようになったという。
毎日一緒に登校し、家で遊ぶ日々が一か月くらい続いたが、ある日少女は木兎の前から姿を消したそうだ。

11月の雨の日。
いつものように、待ち合わせ場所で木兎は少女のことを待っていた。
しかし、少女はいつまでたってもくる気配がなく学校が終わった後に少女の家を訪ねると、今朝引っ越したのだと隣に住んでいたおばあさんに言われたという。

「言いたくても言えなかったんですね。"さよなら"はお互いの気持ちに針を刺す悲しい言葉ですから」
「でも手紙はもらったんだよな。なんて書いてあるんだ?」

木兎から手紙を受け取り、3人は手紙の内容に目を通す。

『こうちゃん、1か月ありがとう。すっごく楽しかったよ。バイバイはいやだから、ばいばいは言わないよ。また会おうね。5年後のこの日におひさまがしずむまえに思い出のやくそくのばしょでまってるね。会えなかったらまたそのまた5年後にあおうね。おばあちゃんになってもまってるね。ずっとずっとまってるね。だからあいにきてね。だいだいだいすきなこうちゃんへ。11月30日。1年2組』

「名前が……雨にでも濡れたんかな。滲んでて読めねえ」
「で、木兎さんはその子に会えたんですか?」
「いや……中学に上がったら部活のことで頭いっぱいで……。思い出の場所もわかんねえし」
「てか、11月30って今日じゃね?もしかしたらまだその女の子待ってるんじゃないのか」
「でも肝心の場所木兎のやつ忘れてんじゃ意味ないだろ」
「暇ですし、思い出の場所を探しに行きませんか?」

赤葦の一言に腰を上げる小見と木葉。
それにつられるように木兎もまた腰を上げた。


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