第3章 私の本丸だ
ごめんね、と声をかけながら短刀たちの間をすり抜け厚くんへ近づく。
何故かシャツの裾を握ったまま後を付いてきた骨喰くんと、私の左手を頑なに離さない鯰尾くんが付いてきたが、気にせず厚くんに話しかける。
「一生懸命頑張ったんだけど、何か問題はない?
右手の指が足りないとか、耳の形が変とか……」
「えっと、指も手と足それぞれ5本ずつあるし。 耳も……普通だと思う」
自分の手足の指を動かしたり、耳を触ったりと素直に反応してくれる厚くんに安心した。
「受け答えもしっかりしてるし……問題なしって感じかな」
ホッとして無意識に頭に伸ばしかけた右手を慌てて引っ込める。
秋田くんが最初に言った『女の人に触られるのはいい気がしない』と言う一言が脳内で再生され、申し訳なくなる。
ボソッ「……撫でてくれねぇのかよ」
手を引っ込めて愛想笑いをしていると、厚くんがなにか呟いた。
「え、今なんて?」
「っなんでもねぇ!! それより、こんなに長居してていいのかよ」
聞き返すと、照れたようにそう言ってそっぽを向いてしまった。
本人がなんでもないと言っている以上突っ込むわけにも行かず、「そう? それじゃあそろそろ次の部屋に行くね」と厚くんに 返して歩き出した。
「鯰尾くんと骨喰くんはどうする?」
私の後ろをズルズルと付いてくる2人にそう聞くと
「「ついて行きます(行く)!!」」と声を揃えて返された。
部屋を出る前に短刀達から名を問われ「元町神奈」と素直に返し、「別に無理して『主』とか呼ばなくていいから。好きなように呼んでね」と言い残してって私は部屋を出た。
その後炊事場まで歩いている道中、2人に私は手をそれぞれ掴られた。
私自身は不快感を感じるわけではないし、本人達が好きでしてるなら。と放置していると、鯰尾くんが私の顔を覗き込んできた。
「お姉さん、この状況で照れたりしないの?」
「なんで?」
「……鯰尾、まずその気にさせることからだ」
「薄々分かってたけど、俺たち意識されてないね」
骨喰くんにそう言われてため息を付いた鯰尾くんは、の手を引いて自分の口元に私の手を持っていった。
チュッと手の甲へ唇を寄せるた、すると反対の手を骨喰くんがほほに寄せる。