第3章 私の本丸だ
「勝手に触っておいてなんだけど、人に触られるのって本当は嫌なんじゃ……」
「人に……女の人触られるのは正直いい気がするものではありません。けど、お姉さんに触ってもらうとなんだか安心するんです」
「まるで、一にぃみたいで……」
驚くほどまっすぐな目で見てくる2人に若干気圧されていると、背後に控える骨喰くんと目が合った。
………スッ
2人の話を聞いてなのか、顔を伏せて頭を差し出してきた。
どうやら撫でて欲しいらしい骨喰くんに、恐る恐る手を伸ばす。
「………っ」
綺麗な髪すぎて触るだけで緊張してしまう。
あと数ミリで触れる……。
そう感じた瞬間、私の目の前に鯰尾くんの顔が突然現れた。
「お嬢さん!! 俺も撫でてくださいよ!!」
骨喰くんに伸ばしていた手を無理やり引き寄せ、鯰尾くんが自分の頭に乗せた。
すごく幸せそうに「えへへへへ!!」なんて笑っている鯰尾くんの背後に立つ骨喰くんからどす黒いオーラが見える。
その様子をみた他の短刀達が「僕も撫でてください」と次々にやって来て、私はすっかり囲まれてしまった。
おにぎりは薬研くんと乱ちゃんが共に離れた場所に避難してくれていた。
小さな子にあまり囲まれた経験のない私はあわあわと逃げ道を探した。
後ずさろうと考えるが、背後から擦り寄ってきた骨喰くんがぐりぐりと私の背中に頭を当てて何かを呟いている。
前方に意識を戻せば、人の掌を勝手に使い弟達を撫でて回る鯰尾くん。
退路も進路も絶たれ、動けなくなっている私の目の隅に一方的に見知った顔が写った。
「なんか鯰尾兄さんと骨喰兄さん、明るくなったね!!」
「まぁまぁ、鯰尾兄に骨喰兄も無事そうで何よりだよ。」
そういって乱ちゃんと短い黒髪の少年がこちらを見て笑っていた。
確か……
「厚くん!!」
「っ!!」
思い出した名前を私が叫ぶと、厚くんは驚いた顔をした。
「よかった、なんとか成功してた……」
「あぁ、そう言えば。
嬢ちゃんが生まれて初めて手入れしたのが厚だったっけ?
成功してるはずだが……」
彼の隣に立っていた薬研くんが不穏な一言をつぶやくと、厚くんが「手入れに失敗とかあるのか!?」と自分の体を確認し始めた。