第3章 私の本丸だ
私が恐る恐る名前を呼ぶと乱くんは動きを止めた。
そしてゆっくりと顔を上げた彼は目を見開き、「男の子にみえるの?」と不安そうな声で聞いてきた。
「え、女の子に見えるけど……男の子であってるよね?
テキストの紹介で載っててあんまり可愛いから印象的で……」
私があたふたとそう答えると、乱くんはぱっと花が咲いたような笑顔になった。
「お姉さん、僕可愛い?」
「もちろん」
「女の子に見える?」
「初期情報無かったら絶対間違えてた。って言うか実は女の子ってことない?」
「えへへへへ。残念ながら僕は男だよ!」
少し照れたように笑う彼はとても可愛くて、思わず見とれるほどだった。
「……嬢ちゃん、それずっと持ってるが重くないのか?」
隣に立っていた薬研くんが指差すのは私の手元のおにぎりだ。
「ん? ……あぁそうだ。 これ、3人で作ってきたからみんなで食べて貰おうと……」
持ってきた食べ物を手渡してと明日の予定を簡単に説明する。
その様子に少し拗ねていた乱くんを「そんな顔も可愛いよ」と褒めると、「それ、天然ならタチが悪いよお姉さん」と顔を赤らめて返された。
「あ、あの!!」
照れる乱くんを眺めていると、後から声が聞こえ振り返る。
そこにはふわふわの桃色の髪の男の子とふわふわの白い髪の男の子が骨喰くんに背中を押されて立っていた。
「あの、、、えっと。た、助けて下さってありがとございます!!」
「あ、ありがとございます……」
恥ずかしそうにそう言う2人が可愛くて無意識に2つの頭に手を置いてた。
「あ、あの????」
「ふぇ……?あ、あの……」
困惑する2人の様子で、ようやく自分の手が頭の上にあることに気がついた。
「え……。
あぁ、ごめんね。つい無意識に……嫌だったよね」
ハッとして、離しがたいようなフワフワの毛の感触に名残惜しさを感じながら手を離した。
「い、嫌じゃないです!」
「も、もっと撫でて欲しぃです」
「そうだよね。ついさっきまであんなことがっ……え!?」
私の不躾な行いに対し、驚くほど欲望に素直な答えが返ってきて驚いた。