第3章 私の本丸だ
「…薬研くん。責任は取るから…ごめん!!」
「え、嬢ちゃ……」
私はもたれ掛かる薬研くんの唇に自分の唇を被せた。
…そう。
被せたもののどうしたら霊力を彼に移せるかも分からず、直ぐに「あ、これ違くね…」と気付き、唇を離そうと腕の力を緩める……
とその腕が掴まれた。
『え?』
私の腕を掴んだ手とは逆の手を薬研くんは素早く私の頭の後ろに回し押さえつけた。
「え、ちょ。神奈さん?」
戸惑いでピタリと動きを止めされるがままの私の後ろ姿を、画面越しに見ていた六弥が声をかける……が。
「んっ…っっ…」
頭を抑えられ、少し開いた唇の間から舌を入れられた私は、そんな事に答えることが出来る状態ではない。
「…んっ…やっ…」
抵抗しようと思うも、相手は一応怪我人だと思い出し拳を握りしめて震えていた。
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どれだけの時間がたっただろう。
ようやく開放された私は肩で息をしながら薬研くんを睨んだ。
「……その、久々のキチンとした霊力の供給だったんで…ついがっついちまった。
その……すまん」
私の視線に正座をして頭を垂れる薬研くんの姿を見た六弥が口を開いた。
「神奈ちゃんは大丈夫? 気持ち悪かったり体に力が入らなかったりしない?」
「まぁ、今の所は何ともない…」
六弥は神奈の答えに目を見開いた。
『あれだけ霊力吸われて何ともないのかよ…』
六弥の引き攣った顔に気が付かず、私は薬研藤四郎に話しかけた。
「今回の事は不問としますが……次やったらただじゃ置かないよ?」
「…本当に悪かった。
で、あんたは何者だ?
アイツをぶん殴ってくれたことと兄弟の事は感謝してる。
だが、俺はまだあんた達を信用した訳じゃない」
そう言って薬研くんは顔を上げると、警戒心を顔に出した。
そう言えばあの娘がここの審神者なのかな?
とりあえず名乗っておくか。
「えっと……名前が元町神奈。
とりあえず、この本丸の臨時の主って所かな?」
「…は??」
私の言葉を聞いて目を丸くした薬研くん。
「で、ここの審神者はあの娘でいいのかな?」
ならば私の仕事はこれで終わったことになり、ひとまず第一関門は突破したことになるけど。