第4章 欠落した記憶
「君のお母さんはね、個性の関係もあって、警察の手伝いをしてくれていたよ。尋問にはうってつけの個性だったからね。」
私のお母さんの個性は相手の心を読む個性、〝読心〟。確かに、尋問にはうってつけだ。
「君の個性も、お母さんの個性も一部のヒーローと警察だけが知る情報であったが、君の個性判断をした病院が敵(ヴィラン)に襲撃され、カルテから情報が漏洩したらしく、こちらの応援もままならぬまま、二人は帰らぬ人となってしまった。…本当に申し訳無い事をしてしまったと、悔やんでも悔やみきれないよ。」
校長先生は小さな手を握り締め、それを震わせた。校長先生が悪い訳じゃない。悪いのは全部敵(ヴィラン)なのに。
「恐らく君のお母さんも闇オークションの対象であったんだろうが、敵(ヴィラン)との交戦で命を落としてしまった。それは敵(ヴィラン)にとっても想定外の出来事だったと思う。そして、敵(ヴィラン)は目的であった君を攫った。ヒーローが駆け付けた時には、君の両親は死んでいた。そして、君が誘拐された後、警察と協力し、血眼になって君を探し、敵(ヴィラン)のアジトを見つけたが、そこに既に君の姿は無かった。残っていたのは敵(ヴィラン)とヒーローの遺体、そして君の血痕。そこで完全に君の消息は絶たれてしまったんだ。」
「あの…私を助けに来てくれて亡くなってしまったヒーローって言うのは…?」
「新人ヒーロー、ポッチャマン。」
「…ポッチャマン。」
校長先生は引き出しから一枚の写真を取り出した。その写真に写る人物を見て、私の体は突如震え出した。
「この…人が、私を、助…け、に?」
「…嗚呼、そうだよ。」
写真に写るポッチャマンは優しい笑みを浮かべていたが、その笑顔がやけに脳裏に焼き付いた。