第4章 欠落した記憶
校長室のソファに腰を下ろすと、校長先生がコーヒーを煎れてくれた。それに口をつけたが、ブラックのコーヒーは大人の味で、とても飲めたものじゃなかった。けど、隣に座る爆豪くんはブラックコーヒーを普通に飲んでいた。…大人だ。
「君の両親を殺害した敵(ヴィラン)は闇オークションを取り仕切る敵(ヴィラン)でね、まあ、厄介な個性を持っていて、我々も随分手を焼いていたよ。」
「闇オークション…?」
「珍しい個性を持った人間を売買してたんだ。〝記憶操作〟なんて個性があれば、色々と便利だろうしね。」
確かに、私の個性は悪用しようとすれば、色々と都合がいい。そう考えると、私の個性はヒーローより、敵(ヴィラン)向けの個性なのかもしれない。
「無論、君のお母さんも雄英卒業後もずっと敵(ヴィラン)に狙われていた。故に、君達家族の住まいにはいつも大手のヒーロー事務所の側である事が条件付けられていたし、ヒーロー達も君達が平和に暮らせるように巡回を行っていた。君のお父さんも家族を一番近くで守る為に、家庭内で仕事をこなしていたよ。」
そうは言われても、お父さんの顔も昨日貰った緑谷くんの写真で見ただけで、お父さんがどんな仕事をしていただとか、ヒーロー事務所が近くにあったとか言われても全然ピンとこなかったが、幼馴染みである爆豪くんはその話に納得したようだったから、多分校長先生の言ってる事は間違えでは無いのだろうと思った。