第2章 おそ松
『はっ?何考えてんの。』
明らかに不機嫌そうな声に
やってしまったと肝が冷えた。
『せっかくカラ松に乱暴に
されたから慰めてやってんのに
お前は考え事?舐めやがって…』
これはまずい、駄目だ。
回避しないと何とかしなきゃ…
六つ子の中で一番怒らせては
いけない人を怒らせてしまった…
こういう時にされる行為はもう、
経験したくなんてないんだから
『から…カラ松…兄ちゃんに…っ』
『あ゙?』
一瞬声の低さにビクつくが
何とか声を絞り出し
『中…に、だされちゃ…ったから
怖くて…あの、だから…』
自分でも情けないほど
しどろもどろであるが…
今の精一杯の勇気だ。
『あぁね、それね
うんうんそれは怖いわ。
そっかそっかまだ
言ってなかったんだなぁ。』
成程と言った風に
おそ松兄ちゃんは傍らにある
小さなテーブルから袋を取る
白い袋の中には何かが
入っているようなガサリと
音がなっている。
『デカパン博士にさぁ
ヤリたい放題できる薬をさ
作ってもらったんだよねー』
『………どういう、こと。』
訳が分からない
デカパン博士に関係性全部
打ち明けたとでも言うの?
それをデカパン博士は
了承したと…言ってるのだろうか
『いやぁ!説得すんのなんて
俺にとっちゃ簡単すぎっしょ!』
『あの…おそ松兄ちゃん…。』
『いくら中で出しても妊娠しない
薬を作って貰っちゃったっ!』
『…っ!?』
戸惑いを隠せなくて
手をわなわなと震わせて
錠剤を見つめて兄を見据えた。
『あーでも、いろいろ
取り扱いについて聞いたけど
俺覚えてないんだよねー?
あとで、チョロ松あたりに
聞いといてくんない?なっ?』
『…ど、して、そんな薬を…。』
『どうしてって…
わっかんないかなぁ?』
錠剤を目の前で掲げ
にっこりと微笑む兄の目には
怯えた私の姿が見えた。
情けない…なんて
誰に向けての言葉だろう。
『俺らはさぁ、ただただ
大事な妹を愛したいだーけ。』
おそ松兄ちゃんは私に近付き
そっと抱きしめれば囁いた。
『そしたらやる事は一つだろ?』
まるで温もりを施した檻のよう。
逃がさないとばかりに
支配されるような感覚
『兄ちゃん…。』
か細い声は何を祈っての声なのか…