第18章 彼の為なら。・:+°家康。・:+°
翌朝
久々に安土城に足を踏み入れ、信長様に挨拶を済ませた。
御殿に戻ろうとすると見馴れた四人の顔が見える。
「久しぶりだな。」
「ええ昨晩戻りました。」
「家康様のお顔を見て安心しました。無事に戻られ何よりです。」
「俺は朝から見たくないお前の顔を見なきゃいけなくて残念だよ。」
「こら、家康。言い過ぎだぞ。」
「好きに言わせておけばいいだろう・・・いつもの事だ。」
「丁度いい。皆揃ってるし聞いたい事があるんですけど。」
「何だ、どうした?」
興味津々といった様子で政宗が聞き返す。
「夕霧に悪知恵を付けたのは誰ですか?」
いつもと違う家康の低い声が響く。
「何の事だかさっぱりだ。」
笑みを浮かべ答える光秀を横目に家康が続ける。
「へぇ・・・俺は政宗さんか光秀さんがあたりが怪しいと思ったんですけど。」
じろりと二人を睨む家康を秀吉が制した。
「今回ばかりは本当だ。酒宴があった時に夕霧に家康の喜ぶ事は・・・と聞かれて、自分のしてほしい事を返したらどうだとは話した。それだけだ。」
あぁなるほど。だから昨日のあの出迎えだったのか。
でも、あれは絶対夕霧が自分で言う訳が無い。
「そうですか。じゃあ夕霧は何であんな事言ったんですかね。」
「だーかーらー。何のことかさっぱり・・・」
あ。
政宗の肩がピクリと動く。
政宗は何か思い出してしまった。
いやいや、まさか。
あの流れなら冗談だって事くらい分かるはず・・・
万が一真に受けたとしても、夕霧があんな言葉言うはずは・・・
ない、絶対ありえねえ。
「政宗さん」
ニッコリ微笑む家康を前に、背中を嫌な汗が流れる。
普段人に感情を振り撒かない人間が微笑む恐ろしさを政宗は肌で感じ取る。
「な・・・何だ家康。」
「さぞかし楽しい宴だったんでしょうね。でも、今度また夕霧をからかうようならあんたでもただじゃ済みません。」
そういうと家康はスッとその場を立ち去った。