第12章 百物語。・:+°政宗ルート。・:+°
立てない・・・
「どうした?夕霧。一緒に御殿にいくだろ?」
「あ・・・あの・・・さっきビックリしたからだと思うんだけど・・・」
「立てない!?」
「腰が抜けちゃった・・・」
クッ・・・と聞こえたかと思うとその後に大きな笑い声が響く。
「お前みたいな女でも腰が抜けるんだな。」
「・・・酷いっ!本当にビックリし・・・きゃっ」
気付けば背中と膝下に腕を入れられ横抱きにされる。
「褒め言葉だ。」
「全然褒めてないっ・・・」
「本当にお前には退屈しないな。いいものをやる。照月、付いてこいよ。」
「みゃー」
「えっ、政宗!?」
「抵抗するならこのまま置いてっちまうが。」
意地悪な顔で夕霧を見る。
「それは・・・嫌・・・」
「素直で結構。」
屈託ない笑顔を夕霧に向け、政宗は自分の御殿に足を向けた。
部屋に着くと褥の上に降ろされる。
先程と違い、いつもの体の感覚が戻っている。
「どうだ?治ったか?」
仰向けになっていた身体をゆっくり起こし、政宗の方を向いて座り直す。
「うん。大丈夫そう」
「ちょっと待ってろ。今持ってくる。」
襖の向こうに消えていった政宗を目で追う。
そういえばさっきいいものくれるって言ってたな。
何だろう・・・。
少し胸を踊らせながら政宗の帰りを待つ。
待っている間にさっきまでの自分の姿を思い返す。
我ながら情けない・・・。
ビックリしたとはいえ腰が抜けるなんて・・・あんなの漫画だけの話だと思っていた。
正体が照月で本当によかった。
知らぬ間に同じ褥で丸まり寝息を立てている照月を撫でる。
「待たせたな。」
スッと襖が開いた。
盆を片手に政宗が夕霧を見下ろす。
「ほら。これ飲め。」
「あ、これ・・・」
褥に座る夕霧の前に盆ごと置かれたのは抹茶茶碗。
でも、あれ?・・・中身が白い・・・
「以前、お前が飲みたがってたやつだろ。」
あ、政宗覚えててくれたんだ・・・