第9章 再び
何故ここにいるのか、そんなことを考える暇さえない。
動けない私は手に持っていた薬を月島くんに取られてしまう。
『つきし、まく…ん』
すぐに取り返そうと思い、手を伸ばそうとするが足がふらついて上手く立てない…
月島くんは私から取った薬をポケットに入れると、私の前にしゃがみこんだ。
『つ、つき…しま、く…?』
「…」
は、早くどうにかしないと。彼が黙っているのをいいことにそんなことを考えていた私の行動が裏目に出る。
「また考え事?君って本当に余裕なんだね」
『っ…ん、ッ!』
そっと耳で囁かれたかと思うと、彼が私の首元に顔をうめる。
その瞬間、首元に少しの痛みを感じた。
「やっと……だね」
『…っ!』
聞こうとして開いた口にまた唇が重なる。
前とは違い普通にただ触れるだけの優しいキス。
「じゃあ僕は行くから」
そういって彼は私から取った薬を返してくれた。
流石にそのまま持っていったりするような人ではないよね…良かった。
「首、隠しちゃダメだからね。」
ぽかんと首を傾げた私に対してニヤリと笑った月島くんは、そう言うと体育館へと入っていった。