第7章 それぞれの気持ち
やはり、そこにいたのは僕が予想していた人物だった。
「うるさい、山口」
「ごめん、ツッキー!!」
もうこのやりとりをするのは何回目だろうか、数えきれない。
それほど、山口といる時間は長いってことだけど。
「何で山口がここにいるわけ?」
そっと思ったことを聞いてみた。
今は昼休みだろう、わざわざ山口が僕を探す理由がない。
「ツッキーが勝手にいなくなるから、探したんだよ?」
探す…僕を?わざわざ休み時間に?
あれ、僕今日の昼休み山口と一緒にいたのか?
それすらも、今は思い出せない。
「それで探してたらここにいたってわけ!あ、それとさ、さっき勢いよく階段を下りていく女の子を見たんでけど、ツッキー何かあったの?」
よくあんなにガクガクとさせた足で、転ばずに走れたものだ
一体あのまま何処にいったんだろう、そんなの僕にはわかるわけないけど。
「あれ、何か甘い匂いがしない?ツッキー何か食べたの?」
「そう?気のせいじゃない」
山口はβだから余り匂わないのか、僕はαのせいなのか彼女の甘い匂いがまだ微かに鼻に残っていた。
「ツッキー大丈夫?顔赤いよ」
「気のせいじゃない」
さっきから同じことしか答えられないのも、まだ残る甘い匂いのせいなのか
そのまま僕は、何事もなかったかのように屋上から出た。
「あ!待ってツッキー!!」
今の僕には、山口の言葉なんて耳に入らなかった。
ただわかるのは、唇に残った感覚と甘い匂いだけ。