第1章 伝説の始まり
私は清之介の袴の裾を掴んで後ろをついて歩いていた。
「……っだから、裾を引っ張らないでくださいって言ってるじゃないですか。」
「ご、ごめんなさい。」
「はぁ。やはり僕は厄介者なのか…」
「ご、ごめんなさい。」
「謝らないでください、余計に惨めになる。」
「ご、ごめ…」
そんなやり取りを繰り返していると、清之介が突然立ち止まった。
「清之介?」
「…何の用ですか、藍染副隊長殿。」
「いえ、ただ彼女の顔をしっかり見ておかないとと思いましてねえ。 うっかり切りかかってしまってはあれですし…。」
なんだろう、この違和感は……
「あぁ、君が仄くんですか。 私は藍染惣右介といいます、よろしくお願いしますね?」
「は、はい……。」
底が見えない。そんな感想を初対面の人に持っていいか分からないが、藍染と名乗ったこの男にはそんな感想しか頭に浮かばなかった。
「もういいですか? 急いでいますので。」
そう言うと、清之介はさっさと歩き出した。
「あ、えっと…」
一応頭を下げ、急いで清之介のあとを追って走り出す。
「あの人は、胡散臭いんで気をつけた方がいいですよ。」
清之介はそう言って追いついた私の方をチラリと振り返った。
「…なかなか興味深い子じゃないか…。」
そんな感想を漏らした藍染は口元に笑みを浮かべ少女の後ろ姿を見送った。