第1章 伝説の始まり
建物の屋根の上を飛び回りながら私は考えていた。
'余計なこと'ってなんなのだろうか……と。
移動の道中見た感じでは、仁山さんと白馬さんが虚と交戦中。
合図を打ち上げる余裕もなく苦戦している様子だった。
仁山さんはこのまま行けば何とか持ち直しそうな気配だが、白馬さんは押されている。長期戦になれば、遅かれ早かれ虚に喰われるだろう。
「けど、これで下手に手を出して睨まれても困るなぁ……。」
波風はなるべく立てたくないんだけど……はぁ、仕方ない。
よっこらしょ。なんてうら若き乙女が使ってはいけない掛け声を使い、電柱の上から重い腰をあげる。
「破道の三十一 赤火砲。」
人差し指を夜空に向けピンと立て無詠唱の赤火砲を唱えると、炎の玉が放たれる。頭上高くまで上がった玉は音とともに爆発し、白煙のみが残った。
その音に気が付き白馬さんと虚がこちらを見上げる。
焦ったように白馬さんが叫んだ。
「っ何をしている!!逃げろ!!」
「…………はい?」
'手を貸せ'なら理解が出来るが'逃げろ'といわれるとは予想外だった。
「合図を上げてくれたことに感謝する!! だが……!!」
なるほど、私がいては迷惑だと。
私では役不足だと。
そう言いたいのか……。
「コゾウ、ヨソミヲシテイルヨユウハアルノカァ?」
虚は頗る楽しそうに白馬さんを追い詰めている。
「グッ!!」
いや、なに今追い詰められたみたいな顔してるの。
こっちは随分前から様子見してるっての……。
「コムスメェ? オマエハコゾウヲクッタアトダァ。」
虚に関しては、もう私をどう甚振るかを考え始めたようで、「マズアシヲキリオトソウカァ? ソレトモメヲツブソウカァ?」とブツブツいいながら白馬さんを追い詰めていた。
男の意地なのか先輩の尊厳を守るためなのか知らないが、そんなことに構っててはせっかくの卒業試験が無意味になってしまう。
私は何も答えず虚と白馬さんの前に降りた。
「バ、バカか!! 君で太刀打ち出来ない!!」
「………白馬先輩よりは相手になるかと思いますよ?」
「ホォ、ミズカラシチニトビコムカァ。ナカナカキコツノアルコムスメヨ。ダガ、アイテノリキリョウヲミアヤッタナァァァァ???」