第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
水から上がった僕はずぶ濡れ。そして水の中に居た?女の子も、勿論、ずぶ濡れだ。男の僕は兎も角、薄着の女の子がそのままは不味い気がする。
しかし、フワリと僕の頭からかけられた柔らかい感触。目の前には、申し訳なさそうな表情を浮かべた女の子。
「私のせいですみません。このタオルを使って下さい。直ぐに水分を吸ってくれますから。」
「【たおる】ってこの布地のこと?僕は男だからいいよ。それより、君は女の子なんだから、君が使った方がいいと思うけど。」
女の子からたおるを取り上げては、女の子の頭をゴシゴシと拭く。少し乱暴だったにも関わらず、女の子は嫌な顔一つしなかった。何か、調子狂うなぁ。
が、そんな中、何処からともなく、気の抜けるような音が聞こえてきた。振り返れば、少し恥ずかしそうな顔をした近藤さんがいた。
「すまん……こんな時に。少し腹が減ってな……。」
女の子はニッコリ笑っては、何やら布地で作られた入れものに手を突っ込んでいる。それは、【鞄】と言うものだと、後から教えられた。つまり、僕たちが知っている風呂敷みたいなものだ。
その鞄から取り出されたのは、衣類のようだった。【洋服】だと言われては、僕に着替えるように手渡される。
普段なら断る所だけど、今はそうも言っていられない。次、いつ、こんな好機があるかわからないからだ。女の子に教えられながら、手渡された洋服に着替えた。
「ヘェッ……すっごく着心地いいや。」
「総司、似合っているぞ。」
「ありがとうございます、近藤さん。君も、ありがとう。」
つい、普通に礼を述べてしまう。それほど着心地が良く、いいモノだと分かる。そして、女の子も着替える。(勿論、僕たちから死角になる場所で)
「少し歩けば、小屋があります。そこで一晩過ごしましょう。」
女の子が言った通り、少し歩くと小屋が見えた。一つ驚いたのは、所謂、錠前のような鍵を持っていたこと。
「ここは、君たちが所有しているのかい?」
近藤さんが訪ねると、当たり前のように頷いた。さっき、【小屋】だと言った。しかし中に入って驚かざるを得なかった。
「これは凄いな……。」
「そうですね……。」
呆然としたまま中を見回す僕たちに、女の子は腰掛けに座るように進めてくれた。