第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
僕がお風呂から出ると、いい香りが漂ってきた。そう言えば、要人のところで何度か見たことがある【ランプ】みたいなものから明るい光が溢れていた。
硝子越しに見える外は、薄暗くなってきていた。僕はランプを覗き込んだ。僕が知っているランプとは違っていた。だって、ランプの中には油ではなく赤い石が入っていたから。
そう……石が燃えていたんだ。本当にこの世界は不思議だ。でも、面白そう。そんなことを思っていると、近藤さんが声を上げた。
「これは凄い!」
何が凄いんだろう?僕は近藤さんがいる釜の方へと近付いていく。そこで見たものは、昼間に見た小瓶と……釜の中にある赤い液。
「毒消し?」
「あぁ、総司。出てきたのか。そうだ、さっき私が頂いた毒消しだ。」
一部始終見ていた近藤さんが、感嘆の言葉を口にしていた。本当に……人を助けるものだったのか。そこで、菫ちゃん(もう一人の女の子の名)は、僕を見ていた。丸で、これで信用してくれましたよねと訴えるかのように。
棚には、色んな色の液が入った小瓶があった。麻痺薬、魔力補充薬、体力補充薬、毒消し……その他にも。
錬金術と言う学問を、人助けのために使いたいと言った華ちゃん。その言葉と共に、強い意志を垣間見ることが出来た。
その夜、僕たちは【ベッド】と言うもので眠った。柔らかいその感触は、僕たちを癒してくれた。熟睡……なんてあり得ないのに、体を休めることが出来たってことは…………ある意味、一服盛られていたのかも?
でも、悪い気はしない。この僕を丸めこむなんて……正直面白くないなんて言ったら、あの子は怒るかな?僕は意識が無くなるまで、今日の出来事を思い返していた。
僕が近藤さんから離れた隙に、怪物と遭遇し怪我を負う……僕はつい、歯噛みしてしまう。近藤さんは僕にとって、何よりも大切な人だ。
あんなことにならないように、気を引き締めなければならない。この先、どうすればいいかなんて何も分からない。でも、僕の傍に近藤さんがいる。今はそれだけで十分だ。
明日、この森から外の世界を目の当たりにした時、僕たちは何を思うだろう?そう言えば、あの子が僕に【飴】をくれた。水の中で息が出来ると言うもの。面白そうだから、機会があったら試してみたいな。
おやすみなさい、近藤さん。