第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
女の子たちを交え、その焼き立てのぱんを食べる僕たち。【ミルクティー】と言う飲み物と合わせて口にする。僕も近藤さんも……怪しさなんて頭から抜けてしまっていた。
あっという間に完食してしまう。近藤さんは、まだ食べ足りないようだ。大食じゃない僕でも、まだ食べたいと思ってしまう。
食器を片付けては、ある場所へと持っていく女の子。そこで……何かを回し、水が出てきたことに驚いた。この世界は、僕たちの世界とはどうやら根本的に違うようだ。
女の子が言うには、【魔力】と言う力があるらしい。そして、女の子たちはものを作り出す【錬金術師】と言う職業で、僕たちに色んなことを話してくれた。
ここまでされて、僕は女の子に緊張を解いた。だって、女の子は最初から僕を警戒していなかった。もう一人の女の子は別だけど。(あぁ言う警戒心の強い子は、土方さんに合うんじゃないかな)
「華ちゃん。これは何?」
「【モラ】っていう木の実です。中を砕いて甘味料として料理の材料になるもので、でも、乾煎りして熱を加えないと甘くならないんですよ。」
小皿に入れて差し出してくれた華ちゃん。僕はそれを舐めてみた。僕たちの世界で貴重な、砂糖のような味がする。因みに、実は銀杏色で栗のような大きさ・形をしていた。
「甘いね。で、何か作るの?」
「パンの仕込みです。時間がかかるんですよね。明日の朝には、また違ったパンを焼きたいので。」
女の子の手際は鮮やかだった。最早、職人のようだと言ってもいい。そして、僕は華ちゃんに質問したんだ。
あんな怪物がいるのに、こんな場所に小屋を立てて危険じゃないのかって。でも、その心配はないみたい。それも魔力の恩恵と、小屋の屋根に吊り下げられていた魔よけになる香木の存在らしい。
もう一つ……こんなに設備が揃っているのに、このまま小屋を空けてもいいのかな。このことは翌日、晴天の霹靂の如く驚かされるんだけど。
そしてこの小屋には、お風呂も備わっていた。錬金術様々らしい。近藤さんが湯上がりで薬草の香りを漂わせて現れた。すっかり、足の方は良くなったらしい。
「総司も風呂を頂いてきなさい。疲れが取れるぞ。」
ここでもまた驚かされる。僕が知っているお風呂じゃない。この世界の遣り方を聞いては、泡立つ【石鹸】を布に付けて体を洗う。あれ?何か……気持ちいいや。