第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
僕たちが驚いたのには、幾つか理由がある。先ずは、外観に比例せずに部屋の広さがあったこと。そして、勝手場が存在している。
また、大きな大きな釜?や小屋の奥にある中が涼しい部屋。(作物らしきものが多数存在していた) その上、窯のような設備と、鍛冶場のような設備……兎に角、普通には見られないものが多数あった。
取り分け……何処からか甘い薫りがしてきた。初めての匂いだけど、甘党の僕と近藤さんが興味を祖剃られてしまう。
部屋の中央にある大きな机と椅子。僕たちが腰を下ろした時、【はな】と呼ばれていた女の子が何かをしていた。つい興味を惹かれ、女の子に近付いていく。
「ねぇ、それは何?」
「あ、これですか?パンですよ。」
「ぱん?」
女の子が作ったらしいそのぱんと言うもの。物凄く甘く焼き立てのいい匂いがする。女の子は大きなお盆みたいなものに、そのぱんを移し入れた。
お盆みたいなものは、【とれい】と説明される。つまり、粗熱を取るために一時的に乗せておく台のようなものとのこと。
その中、女の子は僕にぱんを差し出した。布を巻いて、僕が熱くないように配慮されて。しかし、僕は手を出さない。
僕の態度に女の子は怪訝な顔一つすることなく、一つのぱんを半分に割った。中には、赤い何かが入っていた。そして、一口僕の目の前でぱんを頬張る。
すると、頬を緩めては……また、一口、一口と食べている。この行為は僕に対して、怪しいものではないとの意思表示なのだろう。
僕は一口だけ、口に入れてみた。後は………………あれ?我武者羅に頬張ってしまっていた。そんな僕の行動に、女の子はただ微笑んでいた。
「…………美味しかった。」
「でしょうね。」
そう言い放ったのは、毒消しをくれた女の子だった。何となく、剣のある物言いなのは僕の応対から来るものからだろう。
「華が作るものに、間違いはありませんからね。店に置けば、直ぐに完売しますし。」
どうやら、町では店をやっているらしい。確かに、こんなに美味しければ……と、頷いてしまう。そして、このぱんの正式名は【じゃむぱん】
そこで、背後に気配を感じては振り返った。食い入るようにぱんを魅入っていた……近藤さんがいた。そしてまた……気の抜けた音が響いた。