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【イケメン戦国】紫陽花物語

第34章 キューピッドは語る Side:YouⅡ <豊臣秀吉>




今頃秀吉さん、まじめな顔で頑張っているのかな。


昼下がり。
明るい部屋の中で私は、秀吉さんに思いを馳せた。

お昼ご飯を秀吉さんの隣で食べた後、私は「軍議に貴様の出る幕はない」と信長様に追い出されたから、こうして自分の部屋に戻ってきてのんびり過ごしてる。


食事中のみんなの話題はもっぱら、いかに秀吉さんと私が鈍感だったのか、そればかり。家康を始めとして、皆とっくに私たちが互いを想い合ってる事を知ってたなんて聞いた時には、顔から火が出るかと思った。

普段は狼狽えたりする事の少ない秀吉さんでさえ、少し焦ってるみたいだったなあ。まあそれも、私から見れば素敵なんだけど。



「はあ…まだ信じられない」



こうして一人座ってると、本当に昼寝でもしてみた夢だったんじゃないかって思っちゃうな。

家康に相談してるときには、日々すれ違ったり言葉を交わしたりする度に溢れ出す秀吉さんへの想いをため込んでおけなかっただけ。到底叶うはずないって心のどこかで思いこんでたから、家康に話をしていなかったら、きっとお互いの気持ちに気がつかないままだった。



…それにしても。



どうしても無意識に顔が緩んじゃう。手で頬を力一杯揉むけれど、離せばまた締まりのない表情。
そのまま一人にらめっこのような事を繰り返していると、襖の向こうから声がかかった。



「さとみ、いるか」

「あ…はいっ」



秀吉さんだっ。

慌てて立ち上がった私が襖を開けると、私を見下ろしてる秀吉さんの顔が嬉しそうに綻んだ。もうそれだけで私、どきどきし始めてるよ。



「会議、終わったの?」

「ああ。早くお前に会いたくて、真っ先に出てきちまった」



そう言って秀吉さんは、いたずらっぽく笑う。



「二人で少し出掛けないか?甘い物でも食いに行こう」

「うんっ」



二人でお出かけなんて、久しぶりだから嬉しいな。まだ何の自覚もない頃には、お仕事の手伝いのついでに一緒に市に行ったりしてたけど。



「じゃ、ほら」

「え?」



城から外へ一歩出たと思ったら、秀吉さんが手を差し出してる。これって、えっと、つまり。



「手、繋いでもいいか?」

「は、はいっ」



ああ、緊張して変な返事になっちゃった。
私の手を取る秀吉さんの手は、温かくって大きい。

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