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【イケメン戦国】紫陽花物語

第33章 キューピッドは語る Side:You <豊臣秀吉>





「…すまなかった、家康。大きな声を上げたりして」

「別に、気にしてませんから」



秀吉さんは赤くなった顔を冷ますように首を振った後、しっかりと家康に向き直って頭を下げた。それからさらに、座布団の上に腰が抜けたように座ったままの私を見下ろしてくる。



「さとみにも、迷惑かけたな。怖かっただろ?…ごめんな」

「ううん…大丈夫」



それだけ言うのがやっとだった。秀吉さんの表情には反省と羞恥と、いろんな感情が入り乱れていて、なんて言葉を掛けたら良いのか分からなかったから。

でもそんな私の心配とは裏腹に、入口近くに立ったままだった政宗が、声を上げて笑いだす。



「ははは、お前ずっとさとみと家康が恋仲だと思ってたのか?傑作だな」

「妙に二人の仲が良かったんで、つい勘違いしちまったな…」



後頭部に手を当てて、心底参った顔で秀吉さんが苦笑する。私たちのところまで歩いてきた政宗が、ニヤリと口端を吊り上げながら秀吉さんの肩を叩いた。



「まあ確かに仲はいいが…恋仲に映るような仲の良さじゃねえだろ?どっちかって言うと、兄妹だよな」

「それはそれで不本意です」

「素敵なご兄妹に、私も是非加えていただきたいものです」

「絶対嫌」



キラキラと瞳を輝かせている三成君に、家康が眉間に深い皺を刻んでる。手のかかるのは二人もいらない、とか思っているんだろうな。そんなに私、迷惑かけたっけ…?

とはいえ、怒っていた秀吉さんに笑顔が戻って来たことで、凍っていた広間の雰囲気も柔らかく解けて良かった。

そういえば光秀さんも、すごく楽しそうだった。少し身を乗りだして覗けば、優雅に腰を下ろしたままの光秀さんと目が合う。



「どうした」

「いえ…すごく楽しそうだったな、と思って」

「ああ、今年一番の面白さだった。ところで…さとみ」

「は、い…?」



思い出したようにまた小さく笑った光秀さんが、私の顔をじっと見た。その瞳が私を射抜いて、どきんと大きく心臓が跳ねる。



「秀吉の誤解も解けたことだし、この場でお前の意思を伝えてやればいいんじゃないか」

「えっ、ちょ…」



やっぱり、バレてる…!
まだ心の準備出来てないから、ちょっと待って欲しいのに。そんな大きな声で言ったら皆に聞こえちゃう。

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