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【イケメン戦国】紫陽花物語

第33章 キューピッドは語る Side:You <豊臣秀吉>





翌日の午前中を自室で過ごした私は、昼食の席に間に合うように少し早めに広間へ向かった。

入口で出迎えてくれた政宗と言葉を交わして、中を覗きこむ。秀吉さんの隣が空いて…ないか。どいて欲しいって頼めば、三成君は笑顔で替わってくれるだろうけど…そこまでの勇気はさすがにないし。



「家康、隣いい?」



おずおずと近寄ってそう声を掛けたら、もうすっかり普段の冷静さを取り戻した瞳が私を見た。良かった、もう怒ってないみたい。後でちゃんと、謝ろう。



「いいけど…。せっかくなんだから、秀吉さんの隣に行けば」

「無理無理無理無理」

「なんでだよ…」



怒ってないどころか、協力してくれる姿勢を崩さない家康には申し訳ないけれど、それはさっき私の中で結論が出たばかりだ。



「昨日の今日でしょ。意地でも秀吉さんの隣に行くくらいしなよ」

「だって、三成君が座ってるもん」

「はあ…三成に言えばいいでしょ。それとも、俺が秀吉さんと替わる?」

「無理だって…!」



何で今日に限って、家康はここまで言ってくれるんだろう。もしかして、昨日怒ったこと、少し悪いと思ってたりするのかな。

家康が言う事も分かるよ。機会があれば秀吉さんの横に図々しくても寄ってくぐらいしなきゃ、仲は深まらない。

でも、こんな全員揃ってる場でわざわざ席を替わったりしたら、絶対勘繰られるに決まってる。それでなくとも、無駄に察しの良いのが何人かいるんだし…!



「ほら、行くよ。立って」

「やだやだっ」



座布団に縋りついて、私の腕を取る家康に全身で抵抗する。もしかしたらもう目立っちゃってるかもしれないけど、今はそんな事気にしてられない。



「さとみ、そんな事じゃいつまでたっても…」

「いい加減にしろ、家康」

「…はい?」



突然聞こえた声に、家康も私も動きを止めて顔を上げた。大股で歩み寄って来たのは、ものすごく怒った顔をした秀吉さんだ。少し荒い仕草で、私の腕を掴んでた家康の手を払う。

・・・どう、して。


あまり見たことのない秀吉さんの顔に、心臓が嫌な音を立て始めた。

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