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【イケメン戦国】紫陽花物語

第33章 キューピッドは語る Side:You <豊臣秀吉>





「うん、大丈夫。家康怒らせちゃったのは、私だから…」



襖を開けながら振り返れば、まだどこか心配そうな瞳が四つ私を見てる。安心させるには理由を説明するのが一番なんだろうけど…そんなこと、出来ない。



「また何か困ったことがあれば、遠慮せずに俺を頼れよ?いいな」

「うん…ありがとう」



ああ…かっこいい。

色っぽい垂れ目を少し細めて、力強く笑ってくれる秀吉さん。家康を怒らせたことなんてどうでも良くなってきちゃったなあ…。



「秀吉様、さとみ様に軍議の事をお伝えしては?」

「お、そうだった」



ぽうっと見惚れてしまっていた私の顔を、秀吉さんがのぞき込んで来た。その距離の近さに危うく叫ぶところだったのを、何とか堪える。偉いぞ、私。



「明日の軍議な、信長様がお前も出席するようにと言っておられた」

「私も?」

「ほぼ一日軍議なのは知ってるよな?お前は、昼食から同席すればいいそうだ」

「うん、分かりました」



大きな軍議だって聞いてるけど、私が顔を出す必要のある議題なんてあるのかしら。最近は大人しくしているし、お呼びがかかる心当たりなんて、ないんだけどな。



「また食事がご一緒出来ますね」

「うん、楽しみにしておくね」



三成君がふわりと相好を崩した。三成君の笑顔は、魔法みたい。柔らかな微笑みを見ていると、こっちの心まで温かくなってくる。



「よし、じゃ戻るか。さとみ、また明日な」

「うん、送ってくれてありがとう」



背を向ける二人に手を振って、ふと気が付いた。二人きりじゃなければ、秀吉さんとも普通に話が出来るみたい。

明日の軍議に何故呼ばれるのかってことだけは心配だけれど、たぶん大したことじゃない。仕事の手伝いを命じられるとか、きっとそんな程度。



「うわ、散らかしたままだった…」



破いたせいで散乱した紙の破片。それらを拾い集めてから、新たにまっさらな一枚の紙に向き合って、私は穏やかな気持ちで筆を取った。

面倒事を嫌う家康が、あそこまで協力してくれたんだもん、私も頑張らなくちゃね。

書き終えて内容を確かめ、一つ頷いて大事に折りたたむ。懐からいつも持ち歩いている巾着を取り出すと、そっと中へしまった。

これがきっと、お守りになってくれるはず。

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