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【イケメン戦国】紫陽花物語

第26章 それゆけ、謙信様!*氷解編*




幸村の事は友として。
謙信の事は主として。


佐助にとって、両者は比べようのない程大切な存在だけれど、二人が桜の笑顔を消し去るような行いをするのであれば、見過ごせない。


君の笑顔を守るためなら…俺は何でも出来る気がする。


触れあう手の温もりが、佐助をどこかくすぐったい気持ちにさせる。一緒にいて、触れて。そんな小さな事が、とても嬉しい。

ふと、佐助は自分の手首につけている手製の腕輪のことを思い出した。



「俺がいつも君を守れたらいいんだけど、安土ではなかなか難しいから」



佐助はそう言ってそれを外すと、桜へと差し出した。紐にトンボ玉が通されただけの、シンプルな腕輪。



「この間、試しに作ってみたんだ」

「え!?すごい…」



相変わらずの器用さだ。まじまじと腕輪を見つめる桜に、佐助が微笑む。



「自分用に作った物だから、あまり飾り気はないけど…お守り代わりに貰ってくれたら嬉しい」

「ありがとう…でも、いいの?」

「俺のはまた作る。…でも、やっぱり君には新しい綺麗な物の方がいいかな」

「ううん、これがいい」



嬉しそうに目元を綻ばせて笑う桜の笑顔に、佐助の胸中は温かな感情で満ちる。さっきまでもやもやと渦巻いていた負の感情も、嘘のように消えていく。手首につけて見せてくれる、その腕輪がまるで自分の分身のようで。


俺の代わりに、君の笑顔を守れますように。



「…ああ、そうだ。ついでにこれも渡しておく」



まきびしと、数個の煙玉を一緒に革袋に入れて、桜へと手渡した。



「幸村や謙信様がまた君にひどいことをしたら、遠慮なく投げつけてくれていいから」

「あ、ありがとう。出来れば、使わないで済むといいんだけど」



苦笑交じりの桜を、そろそろ城へ帰さなければならない。頭の冷静な部分では分かっているのに、相反する感情が抵抗している。

それでも無理矢理感情を追いやって、佐助は立ち上がった。



「君はそろそろ帰った方が良い。きっと、心配されてる」

「そうだった…うう、秀吉さん怒ってるかな…」



父親を恐れる子供のようなあどけない顔で怯える桜が可愛くて、佐助は小さく笑った。
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