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【イケメン戦国】紫陽花物語

第24章 それゆけ、謙信様!*遭遇編*




翌日、桜はまだ朝も早い内から城を出た。光秀の言う事も尤もだったし、大会が終われば謙信も安土から離れるだろうけれど。


任されたからには、早めに済ませなくちゃ。


元来の真面目さが、謙信への恐怖より仕事を優先させた。だが。



「う…!」



よりによって、桜が今から入らなければならない店の前に、恐れるその姿があった。先日の出会いが最悪だっただけに、近づくのも躊躇われる。


…よし、あの店は後回し!


ぐるりと潔く踵を返す。



「桜」

「…はい」



一歩遅かった。
桜を目ざとく見つけた謙信が、その名を呼ぶ。それを無視できるほどの勇気は、桜にはない。おずおずと振り向くと、涼し気な眼がこちらを見ている。


あれ…?


仕方なく傍へ歩み寄ると、身構えていたほどには怖くないような。



「…何だ」

「い、いえ」



謙信のことをつい見つめていた桜を、不快そうな瞳が睨んだ。前言撤回。やはり怖い。

その店で用事を済ませた謙信は、桜に来い、と一言言ってから、先を歩いていく。


え…どうしよう。


どこに連れていかれるのか。怖くて聞けない。仕事もあるし、このまま逃げようか。



「何をしている。さっさと来い、桜」

「…はい」



諦めて、すごすごとついていく。



「座れ」

「はい…」



謙信が桜を連れて来たのは、茶屋だった。空いている床几に二人並んで腰かけると、謙信が注文を済ませる。



「あの…?」



何故茶屋に連れてこられたのか分からずに、恐る恐る声をかける。横目で謙信が桜を見たのと同時に、茶と団子が運ばれてきた。



「この間の詫びだ、食え」

「詫び…?」


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