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【イケメン戦国】紫陽花物語

第24章 それゆけ、謙信様!*遭遇編*




「…何で赤くなってんだよ」

「ゆ、幸村こそ…」



こそばゆい空気が流れて、二人共目を合わせられずにいるのを、信玄はうんうんと頷いて笑う。



「初々しいね。幸村にもそんな相手が出来て、俺は嬉しい」

「なっ」

「違います」



さらに赤くなる幸村の横で、桜はびしっと否定した。桜にとって幸村は、気兼ねなく話せる喧嘩友達、といったところだろう。違うのか、と呟いた信玄は、何処か嬉しそうだ。



「では…姫。君を俺が逢瀬に誘っても、問題はないな?」

「駄目です」



言葉と同時に、流れるような自然な仕草で桜の手を取った信玄の腕を、横から幸村が掴んだ。



「なんで止める、幸」

「あんたにフラフラされると、俺が困るんですよ」

「本当にそれが理由かな?」



見透かすような信玄に、幸村がぐっと詰まる。手を取られたまま置いてきぼりだった桜は、まだ仕事中だったことを思い出して二人を見上げた。



「あの、ごめんなさい。私仕事を頼まれていて、まだ途中なんです」

「そうか…残念だな」

「じゃあ、失礼します」



あっさりと解放されたことにほっとしつつ。にこやかに手を振る信玄に会釈すると、桜は足早にその場を後にした。



「良い子だなあ、幸?」

「…何が言いたいんですか」

「んー?」



疲れたようにため息をつく幸村の肩を叩いて、信玄が笑う。その眼の奥には、限りなく優しい光が灯っていた。


その日結局、桜は仕事を終えることが出来なかった。幸村に明日の謙信の予定を聞いておくんだったと、茜色に染まった道を城へ向かいながら嘆息する。

城へ入る門の手前で、先を行く光秀を見つけて、桜は駆け寄った。



「光秀さん」

「仕事か、桜」

「はい…でも、終わりませんでした。明日も頑張ります」



桜と共に履物を脱ぎながら、光秀は口を開く。



「店への支払いなど、大会が終わってからでもいいだろう。気楽にやれ…過保護な秀吉が作った名簿ならば、時間はかからないだろうが」

「はい。ものすごく、分かりやすいです」

「そのはずだ。なんせ、あいつは店の場所まで確認しに行ってるからな」

「え、そうなんですか」



くく、と光秀が愉快そうに笑う。
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