第20章 温泉旅行へ*秀吉エンド*R15
「桜…?」
「家康…ごめん…」
眠たい、という言葉ももう言えずに、桜の体はふらりと傾いだ。
「桜っ」
そのまま床に倒れていきそうになった体を家康が慌てて支え、桜の頭を自分の膝へと誘導して寝かせる。
「おい、桜?」
「…寝てますね」
秀吉と家康が共に桜の寝顔を見たあと、顔を見合わせる。
「…疲れてたのかもな」
「でしょうね」
「俺が部屋まで運んでくる」
「…別にこのままでもいいですけど」
膝の上の桜の髪をするりと梳いて、家康が呟く。その仕草に、秀吉は眉間に皺を寄せるけれど、何かに気付いて笑いをこらえ、咳払い。
「別にいいが…お前、信長様に今度こそ斬られても知らないからな」
「は?……」
怖い顔をした信長と目が合うと、家康の髪を梳く手がぴたりと止まる。
「…秀吉さん、お願いします」
「ああ、任せとけ」
桜の身体を軽々と横抱きにすると、秀吉は広間を後にした。
信長からの無言の圧力が無くなって、ため息をついた家康は、桜の様子を思い返す。
疲労してた所に酒が入ったせいだろうけど…、少し様子がおかしかった。
だが、桜が飲んだ酒は今も信長が飲んでいるし、杯も信長のもの。それに、眠気以外の症状が出ていたわけでもない。
まあ、心配するほどの事はないか。
念のため明日の朝にでも、体調を確認してやろうとだけ決めて、家康は考えるのをやめた。