第4章 他人に悪事を行えばそれなりに仕返しされるもの
「ぷっはー!ねえねえ殴り込みっすか!?」
十四松はとめていた息を吐き、目を輝かせる。
「ノンノン、殴り込みじゃあないぞ十四松」
カラ松がそう諭すと十四松は少し残念そうに眉尻を下げた。
『そういうわけで私は準備して行くけど、皆も付いてくるの?』
準備と言っても着替えぐらいだろうか。
朝から走り回って汗をかいたので先にシャワーを浴びたいところでもある。
「え、ムーメちゃんが行くの?
なんか別の人に行かせるみたいな話じゃなかった?」
トド松が意外そうな顔をする。
説明してなかったかな、と思いつつ立ち上がる。
『私、依頼人との交渉は自分でやるんだけど、
こんなのが殺し屋なんて舐められちゃうから、仲介人として出るの。
他の人に頼むのは、色々面倒だし。』
私は自分の容姿は強みであり、弱みだとわかっている。
大抵の人間は油断し、時には見下してくるのだ。
こんな子供に何ができるか、と。
案外便利なんだよ、と付け足すと、トド松は曖昧に笑った。
『ねえ、着替える前にシャワー借りたい』
廊下への扉を開けて、左を指差す。
こっちだっけ、と尋ねると四人は何故か激しく首を縦に振る。
その様子に戸惑いながらも、じゃあ入ってくる、と言って部屋を出た。
廊下に出ると途端に部屋の中が騒がしくなったが、あまり気にしない。
普段兄弟だけでいるとこんな感じなのだろう。
廊下を左に進むとすぐにシャワールームと思われる部屋の前に着いた。
扉を開けると洗面所と洗濯機が置いてある。
どうやら脱衣所のようらしく、私はさっさと服を脱ぎ、さらに奥の部屋へと進む。
中は普通のシャワールームと違い、シャワーと湯船が独立して設置してある。
少し考えてから、日本式のお風呂だと気づく。
とりあえずシャワーのノックを捻ると、冷水が降ってきた。
その冷たさに肩を跳ね上げるが、降ってくる物が暖かいお湯に変わっていき、私は緊張を緩める。
昨日もあのあとそのまま寝てしまったし、今日は汗だくだったので、シャワーを借りられたのはありがたかった。
シャワーの暖かい心地よさに浸っていると、棚に並べられたシャンプー達に気づいた。
今更聞きに行くのも面倒なので勝手に使わせてもらうことにした。
頭を一回、身体を二回洗ってシャワーを止める。
直後、バタバタと幾つかの足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
