【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。
第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。

「藤崎、野菜は切り終わったか!」
「はい、切り終わりました!」
四宮先輩の声を聞き、葉物野菜以外の野菜を切った物をボールで渡す。バターで軽く炒める四宮先輩を見つめ人参が柔らかくなり、玉ねぎがしんなりした所で準備していた分量で計ってある水、コンソメを言われる前に、欲しい時にさっと渡した。すると四宮先輩は目を見開き一瞬だけ驚いた顔をしていたが、直ぐに料理に集中する。
ぐつぐつと煮立って来たら、葉物野菜やウインナー、牛肉を渡し彼が鍋の中に加えてフタをし10分~15分程煮込む。私は彼の邪魔をしていなかっただろうかと、使い終わった食器を水に濡らし洗い始める。
「藤崎、お前はのろまの癖に随分…」
「えっ、なんですか…?」
「いや、なんでもない」
四宮先輩の声が小さく、水道の音で掻き消えてしまった為分からず首を傾げる。しかし四宮先輩はなにもないというように左右に首を振るだけだった。
「食器割るなよ」
「なっ、前のあれは本当に違いますよ?ただ、その…四宮先輩に初めて会って緊張していたというか。やっぱり…遠月十傑の人に出会うとかそうそうないですし。私にとって四宮先輩って、やっぱり憧れの人ですから…」
ポトフのぐつぐつと煮込む音だけが聞こえる。妙な空気に気まづくなり、自分の両手を指に絡めるとチラリと上を見上げた。すると四宮先輩は顔を赤く染めて、なにか言おうと口をぱくぱくさせているだけだった。四宮先輩、もしかして…照れてる?と呆然とする私に向かってようやく口を開いた。
「な、おま…そんな、はずかし…あぁ、くそっ!」
大声で四宮先輩はいい、赤くなった顔を背ける姿にゾクッとなにかが通った。悪戯心がくすぐられてしまったのか、自分でも分からないが…なぜかその可愛らしい四宮先輩に悪さがしたいと思ってしまう。
そっと彼に近付くと、身長の高い彼をじっ…と見上げて笑う。
「四宮先輩…顔真っ赤ですね?」
「はぁ!?そ、そんな…わけっ…」
ないと私の方を向いた時、私はつま先を上げて彼の形のいい唇に私の唇を重ねた。ちゅっ…と可愛らしいリップ音に、四宮先輩とキスしてるんだなと他人事のように考える。離れると彼は先程よりも顔全体を赤くして唇を手の甲で押えていた。
「ふふ、私とのキス…どうでしたか?」
「ふっ、ふざけてんのか!」
「まさか…だって、四宮先輩が可愛かったから」
