第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
「必殺!墓石落としぃ!!」
奪った槍の本体?を崖下へと投げ捨て、骨の方には必殺の一撃を食らわせてやった。
崖の直ぐそばで技を決められた最後の槍は、抵抗する暇もなくそのまま奈落の底へと落ちていく。
「…………………終わったか。はぁー!!どうかしてるわ。」
崖という武器を持てたから勝てたものの、正直クタクタであった。
奇跡に近い勝利。本当に、運しかない。
やっぱり、神様は見ていてくださっているんだ。………自身が付喪神であることも忘れ、彼岸花は必死に天へと礼を述べた。
………祈ること五分。ふと、残してきた刀剣達の事を思いだし、彼岸花は立ち上がった。
いつの間にか木へと突き刺さっていた刀を抜き、鞘へと納める。気分は晴れやかだ。
勝手に走っていったこと、怒っているだろうか。説明して理解してくれると良いのだが。
そう思いつつ、来た林を戻る。
先の事なんて誰にもわからない。
それと同じように、誰も見ていない事実など他人はわからない。
それを理解していれば、何かは変わったのだろうか。
「…………誰もいない。おいおい、帰っちまったのか。冷たいなぁ」
口ではそういうものの、彼岸花の顔は晴れやかであった。
初めての勝利は彼岸花にかけがえの無いものをくれたと思う。心配事は色々とあるが、それは帰ってから考えよう。
歩く彼岸花の足が、不意に止まった。
否、足だけじゃない、背筋も表情筋もこおった。
「…………………え?」
それは、前方に槍が立っているからだ。
瞬時に頭が戦法を考え始める。あぁ………駄目だ、思い付かない。
逃げないといけないのに、足が動かない。
彼岸花は立ち竦んだ。
沈黙。
瞑っていた目を開けば、一歩も動いていない槍。冷静に見ると、次第に奴のおかれている状態が解ってきた。
「………………………………あれ。これはもしや、お前はもう死んでいる、というやつ?」
近づくと臭ってくる血の香り。
しかし、何故こいつは立ったまま仏さんとなっているのか。
近くに寄ってみた時、その理由はわかった。
「おう…」
串刺しである。鶏皮。
立ったままの槍。その体を貫く槍。意味がわからない方に詳しく言えば、骨を槍が貫いている。自分で自分を貫かれた状態。
なんという手の込んだ自殺。
…………な訳がなく、恐らく彼岸花と共に来ていた刀剣達の仕業だろう。