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【刀剣乱舞】守護者の恋

第6章 咲弥という守護者


「鍛刀で大太刀を呼び寄せるなんて」
もう、これは何があっても驚かない。
小狐丸の件でそう思った束穂であったが、数日後に石切丸がやってきたことにはやはり驚かざるを得なかった。
彼は、その本丸にあまりにも似合う穏やかな刀であった。ゆったりとした気風が審神者と合ったようで、気づけば午後のうららかな時間に審神者を刀二人が囲んで茶をする姿――彼女が過去に遡れるほど調子がよくない時など――が当たり前になっていた。
彼女は、刀を呼び寄せる力は強かったけれど、その一回一回に相当体力を削り、過去を遡ることも頻繁には行えなかった。
よって、現在の本丸のように「出来れば出陣ごとに審神者が刀達を過去の時代に送る」という芸当はせず、束穂の力を借りて本丸ごと時代を遡りしばらくはそこで時間を過ごす、という形で運用していた。
そんな時。
三日月宗近という刀が本丸に呼び寄せられ、そして、審神者の「刀を付喪神として呼びよせる力」が同時についえてしまったのだ。

その頃、本丸の庭には桜が咲いていた。
春の限られた時期しか見られないその光景を皆で見られるとはなんという幸せか、と彼女は笑った。
出陣をする際に
「今宵は月が美しい予感がするから、帰ってきたら夜桜でも愛でようではないか」
と三日月が笑えば、小狐丸も笑って「ぬしさまが眠りにつく前に」と言う。
審神者はくすくすと笑って「楽しみに待っておりますゆえ、どなたもひとかけらも刃こぼれのないよう」
と答えた。
彼らは功を急ぐより何より、彼女が悲しい思いをすることを嫌った。傷ついて帰れば彼女は悲しげに彼らを手入れ部屋へといざない、その部屋の前に静かに座る。
何度小狐丸が「ぬしさまはここにおっても仕方がない」と言おうと、彼女は決して譲らなかった。
手入れ部屋で身を治すのは彼ら自身ではないが、物理的に審神者が行うわけでもない。だが、そこに審神者の力が関与していることは事実だ。
だからといって、傍にいれば治りが早いということでもない。
だが、彼女は傷ついた彼らの傍にいたいと、数少ないわがままを言って皆を困らせた。これには刀達が困り、結果、傷つかずに帰還をすることを優先するようになったのだ。
それでも、戦場に赴いていれば、時には手入れが必要となる。
そして、もうすぐ桜の花が終わる、という時。
三日月が負傷をして戻ってきた。
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