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【刀剣乱舞】守護者の恋

第6章 咲弥という守護者


体が弱く、運動も出来ないというのに、彼女の立ち姿はいつも美しかった。
まっすぐな艶やかな長い黒髪と同じように、まっすぐに美しく立ち、初めての刀を迎えようと緊張をしていた彼女の姿を今でも覚えている。
審神者が本丸に最初に呼び寄せる刀は、ほぼ抜刀であると政府からのデータは既に出ていた。それ以降に魂を引き寄せやすいのは短刀であったけれど、不思議なもので短刀は用心深いのか「誰もいない」本丸には決して来ない。そして、脇差の魂もまた「一定以上の刀の気配を感じなければ呼び寄せづらい」とされている。
今となればわかる。短刀も脇差も、人の姿としては比較的若く、人間界で言えば「保護者を必要とされる」外見で顕現する。そういった要素が絡んで、誰一人いない場所に自分の身――というか魂――を投じられるのは、抜刀からと言われているのだ。
だから。
一番最初にその本丸にやってきたのが小狐丸であったことには、束穂も、その報告を受けた政府のプロジェクト上層部もたまげて
「これはとんでもない審神者がいたものだ」
とかなりの波紋を呼んだものだった。
だが、当の彼女は、やってきた小狐丸に対して
「やはり、三条の刀と共に生きよと。この縁(えにし)に感謝しましょう」
と告げて、何の躊躇もなく背伸びをし、手を伸ばし、小狐丸の髪を撫でた。
初めてのことにいくらか戸惑いつつも、小狐丸は
「ぬしさまがこの小狐丸の力を欲する者ならば、お力になりましょう。この姿を人に触れられるのは初めてではございますが、このように優しく毛を梳かれては」
くくく、と小さく笑って目を細め、本当に野生の狐のような表情を見せた。束穂はただただその光景に唖然として見つめるだけだったというのに、彼女は「やあ、わたしが呼び寄せたのは刀でもあり狐でもあり。ともにいる時は十分に毛を繕ってあげましょう。戦に出れば、十分にその切れ味を発揮していただきましょう」
と言いながら笑ったのだった。
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