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【刀剣乱舞】守護者の恋

第5章 秘密の欠片


「こぎつねまるはぼくらとおなじさんじょうのかたななのですね!」
嬉しそうな今剣の声と、いつもと変わらぬ岩融の様子をちらりと見ながら、加州は小さくため息を付いた。さて、どうしたものか……
「何。あの狐はいわくつきの何か?」
加州の様子が少しおかしい、と気づいたのは勿論安定だ。
「あー、いや、うん。いや、あー」
「はっきりしないってことは、そうだってこと?」
「んー、俺がどこまで話していいかもさっぱり。多分、それについてはみんなに話があると思うんだけどね」
「ふうん……もしかして、束穂絡み?」
「うっわ、なんでそんなとこ鋭いわけー?」
「そんなの、簡単だよ」
安定は肩をすくめてみせた。
「僕じゃなくたってわかる。主のところから束穂がまだ帰ってこない」
「……あ」
「離れに戻るには、この部屋の前を通るはずなのにね。どんな長話をしてるのかと思うだろ」
それは確かに。
であれば、安定以外の刀でもそれを察している者がいるということか。
「んー……」
いくら出陣がないとはいえ、全員が居間に集まっているわけでもない。馬当番の者や畑当番の者は当然いなかったし、この騒ぎでも特に他の部屋から出てこない者――宗三や小夜、蜂須賀や山伏がそうなのだが――もいるし、本丸内を案内しなければいけない。
ちらりと加州は薬研を見た。
彼はいつもと変わらぬ態度で小狐丸にも「俺っちは薬研藤四郎だ。よろしくな」と言っていたが、挨拶を終えた後に加州に視線を送っていたのだ。
安定の側を加州が離れると同時に、加州に近寄る薬研。
「どうした……何かいわくつきかい?」
「安定と同じ言い回ししないでよ」
「そりゃ、悪かったな」
薬研は何一つ悪くないのだが、けろりと適当に謝罪を口にした。
「あのさ。まだ束穂がいると思うんだけど……いや、束穂は別によくって……」
「大将んとこ行ってどうしろって?」
「とにかく、俺が困ってるからどーにかしてって」
「?だから何に困ってるんだ?」
「それを口に出来ないから困ってるっていうこと」
「ははあ」
わかるはずもないのに、薬研はそう言って小さく笑うと、それ以上の問答はせずにするりと部屋を出て行く。
深く追求はせずに動いてくれる薬研の存在に、加州は心底救われた気持ちになった。
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