• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第5章 秘密の欠片


「わッ!でかい狐だ!!」
小狐丸がみなの前に姿を見せたところ、最初に思ったままを素直に口にしたのは獅子王だった。
それへ「獅子の方が狐より細いようだな」と馬鹿にする風でもなく淡々と山姥切が言えば、言われた獅子王の方もまた気を悪くせず「俺の細さはじっちゃんのためだからな。恥ずべきことじゃないぞ!」と笑う。
「おお、これはなんとも可愛らしい」
小狐丸は五虎退の周りに集まっている虎を見て、笑みを浮かべた。
「狐なのに虎が怖くないのか?」
と同田貫が言えば、小狐丸の返答より先に「お前だって狸のくせに」と御手杵が茶化し「ちげーよ!」と叫ぶ羽目になった。
「鳴狐だって別に虎達を怖がってないだろう?」
青江の言葉に「まあそうか」と御手杵はあっさりと納得をする。
初めて本丸にやってきた刀は、大体が人の姿となった自分にいくらかは戸惑い、その生活を始めることにあれこれと疑問を持つし、本人は無意識にそれなりに神経をすり減らすものだ。よって、これだけの人数を抱えた本丸でも、数日は気疲れを回避するために一人部屋を与えられるのだが……
「んー……」
難しい表情で唸る加州。正直、小狐丸をどのように扱って良いのか、彼はまだわかりかねているのだ。
なんとなくは察している。
小狐丸は以前束穂が、どうやら「さや」という名前で呼ばれていた別の本丸にいたのだろう。そして、どういう経緯かはわからないが、彼は折れることなく再び刀として眠りにつき、またこの本丸に呼ばれた。
折れることなく、という点がここでは重要だと加州は知っている。
実のところ、この本丸では初期の頃にとある短刀が一度折れていた。そのことがあって、審神者は特に短刀達に細やかに気を配っているけれど、それを知っているのは加州と薬研、陸奥守、今剣、乱の五人だけだ。
一度折れた刀とは再会をすることが出来て、出陣途中に加州がその魂を回収をし、審神者の力で付喪神として再度現れてもらったのだが、同じ刀であっても一度この本丸で折れた刀とは記憶を共にはしていなかった。魂を付喪神として顕現した状態で折れてしまうと、付喪神として存在した期間のことは記憶に残らないらしい。
だから、この小狐丸は「前の本丸で折れずにいた」けれど、刀としての魂の形に戻っていたのだ、と加州は理解をしている。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp