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【刀剣乱舞】守護者の恋

第13章 人の心刀の心(長谷部)


人がいる方へ、炎があがる方へと選んで己から飛び込めば、兵士らしき人の群れが見える。
長谷部はそれらの背後から飛び込んで行った。
そこにいた兵士達は「敗れた明智の兵」であり、一部は自分達が矢を刀を向けようとしていた相手が信長だったとは知らなかった者達らしく、完全に戦意は失っているようだった。
ありがたいことに、人の波をかきわけるのは長谷部より薬研の方が得意らしく、ついに薬研は長谷部に追いついた。
「どうしたんだよ!」
「離せ、薬研!」
「離せるか!」
小声ではあるが尖った声で長谷部を止める薬研。
「部隊長が傷ついた仲間おいてまで、何をしたいんだ!」
「……信長を討ってくる」
「はあ!?」
「このままにしておくわけにはいかないだろう」
染められるはずがなかった時刻の夜空は、こうこうと炎で照らされている。
足早に逃げる人々、火を消そうと走っていく火消達、兵士に散らされる見物人。
馴染みのある時代の人々の中、二人は早口で問答をする。
「だからって、そんなことしてなんになるんだ。明智光秀は既に討たれている」
「どうせ数日後に死ぬはずだった人間だ。それに、ここで信長が死ななければ、備中から豊臣秀吉は戻らないだろうし、次の天下人に誰がなるのかすら危ぶまれる。お前は早くやつらの元に戻って、帰れ」
そう言って長谷部は薬研を突き飛ばそうとしたが、それをやすやすとさせる薬研ではない。
「そんでも、明智がいない時点で山崎の戦いは起きない!そう簡単な話じゃない!」
「わかっている!それでも、9割の改変を8割7割にとどめられるなら、やらないよりは良かろうが!」
「帰って大将に指示仰ぐのが先だ!」
「では、俺たちがここにいる意味はなんだ、薬研!」
長谷部の声は悲痛だ。薬研もわかっている。みすみす歴史改変を目の当たりにして、自分達が何も出来ないまま戻るなぞ、そんな苦汁を飲むなど。
どうして自分たちが今日ここに来たのか。
それが偶然であっても、何かの意味があるのではと思わずにはいられない気持ちも、嫌というほど薬研だってわかる。
「斬ったら、自分も歴史改変に手を貸したことになるぞ!」
「それで少しでも改変を止められるならば。主の力になれればそれで良い!!」
「そういうことじゃねえ。そういうことじゃないだろ!俺っち達がやるべきことは……」
「刀だからこそ、斬れる。そのためにあるんだろうが!」
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